本記事では「主人」を例に言語や文化によってどのような表現が良いのかをまとめました。
外国人に紹介する時に使い間違えないよう、ぜひ参考にしてください。
日本語における「主人」の概念
夫のことを知人に話すときに「主人」と表現することがあります。
日頃、無意識に使っている言葉ですが、丁寧な表現でよいと思われがちです。
一方でジェンダーレスの時代には「主人」という表現に敏感に反応する人もいます。
では「主人」とはどういう意味があるのでしょうか?
日本人が夫のことを主人と表現するようになったのは、昭和30年頃といわれています。
それまでは「夫」がよく使われていたそうです。
似た言葉で「亭主」にも「主」が付いていますが、この「主」という字がポイントです。「主」とは主従関係の上の対場を指す言葉との解釈の仕方があります。
日本語には謙譲語という表現方法があり、相手を高く立てる時に使うことが多いです。
しかしジェンダーレス、男女平等の風潮が広がる社会では差別的表現にとらえられる場合もあります。
知人の夫のことを「主人」と表現することは、同時に知人のことを「下の立場の者」という表現しているのと同じです。
「主人」または「夫」と表現することで、自分の夫や相手の女性への気遣いも表現されます。
日本語以外での「主人」の意味
もともと日本語は呼称の多い言語ですが、外国語では日本語ほど呼称を多く用いていません。
逆に言えば日本人よりも意味を重視して使用していることが多いとも言えます。
世界で使われる言語は非常に多いです。
この記事では日本人になじみのある下記のエリアの外国語の主人の意味をいくつか調べました。
- 西洋文化圏
- アジア文化圏
それぞれについて詳しく解説します。
西洋文化圏における「主人」の表現
ヨーロッパやアメリカでは「主人」に該当する言葉はいくつかあります。
- 英語
- フランス語
- ドイツ語
- イタリア語
- スペイン語
ヨーロッパは古い貴族社会の風習や文化が残っていますが、日本よりもジェンダーレスな社会です。
日本語よりも優位性や主従関係を含めた意味合いの言葉は少ないです。
英語
英語では「主人」に該当する言葉が主に3つあります。
- husband:夫、主人
- master:名人、師匠
- owner:主人、持ち主、所有者
英語の場合は「主人」と表現するのにはhusbandが無難です。
相手の職業が店主をしている場合はmasterと呼ぶのもいいでしょう。
店主ではなく事業主であればownerと表現しましょう。
相手が事業主の場合にmasterを使うのは、本来の立場より下に見ていることになります。
これは失礼に当たりますので注意が必要です。
相手の主人がイギリスの貴族階級の称号をお持ちの場合はその称号で書く、またはあたまにsirを付けて呼ぶ礼儀作法を使いましょう。
フランス語
フランス語では結婚しているか、していないかで呼び方が変わります。
また強い主従関係の意味を持つ言葉もありますので、使い方に注意が必要です。
- mari/époux/conjoint:結婚している場合の夫
- compagnonconcubin:結婚をしていない場合の伴侶、同棲者
- maître:雇い主、(奴隷を持つ)主人の意味合いが強い
フランス語の場合はmari/époux/conjointを使うのがよいでしょう。
よく聞く「Monsieur」は男性のお客様への呼称で使うことが多いです。
maîtreはやや主従関係の意味合いがあるので使うのは控えた方がよいでしょう。
ドイツ語
ドイツ語における「主人」は主に5つあります。
- Mann:日常的な場面での「夫」
- Ehemann:法的な文書や公式な場面で使う丁寧語
- Gatte/Gemahl:フォーマルな場面の書き言葉
- Herr:ビジネスの場面で使う尊称。主従関係はない
- Meister:職人、名人を意味する尊称。主従関係にも使われる
現在よく使われているドイツ語には差別的な表現は少ないようです。
日本語における「夫」に対してはMann、主従関係のない「主人」としてはHerrが望ましいでしょう。
イタリア語
イタリア語での「主人」の単語は多くありますが、ここでは主に使われる3つの言葉を紹介します。
いずれも主従関係や優位性はありません。
- marito/Signore:夫、主人
- coniuge:配偶者
- maestro:職人、名人。特に音楽会における尊称
イタリア語は古くからの歴史があるので、他にもさまざまな言葉があります。
中には差別的または主従関係を意味する場合もあるので使うときに注意が必要です。
maritoまたはSignoreが無難で失礼のない言葉でしょう。
スペイン語
スペイン語の「主人」にもいくつかの表現がありますが、主従関係を語源に持つ言葉はありません。
- esposo / marido:一般的な「夫」を意味する
- cónyuge:配偶者を意味する
現在主に使用されているスペイン語には、主従関係の意味合いを持つ言葉は少ないようです。
一般的にはesposo / maridoのどちらかを使うのが無難でしょう。
西洋文化圏では「主人」で翻訳した場合、日本語に比べて主従関係が語源になっている言葉は少ないので、日常的に使う言葉で安心して使えそうですね。
アジア文化圏における「主人」の表現
アジア圏ではアルファベットに対して、漢字などの表意文字や表意文字から発音だけが変化した言葉が多くあります。
- 中国語
- 韓国語
- ベトナム語
そのため日本語のように主従関係が語源になっている言葉が存在し、今も使い分けていることがあるので注意が必要です。
中国語
日本語の漢字の感覚で見ると意味を取り違えやすいのが中国語です。
日本語ほどの複雑さはないですが、意味をよく知って使いましょう。
- 夫/丈夫/老公:一般的な「夫」の意味で使うことが多い
- 主人:日本語と同じで権威や「主」を表す言葉
- 先生:主人の尊称。自分の夫のことを指すには特に控えた方が良い
日本語のように名詞の謙譲語はありません。
しかし日本人と同じく、意味合いとしては自分の夫を指すときに権威ある表現はあまり良い印象はないでしょう。「夫」「丈夫」が一般的です。
韓国語
韓国語はハングル文字が主流なために日本人には見ただけでは分からない言葉が多いです。
ただし元は漢字から伝わっている物が多く、中国語と同じ意味合いがあります。
- 남편 (nampyeon):一般的に「夫」として使われる
- 남정네 (namjeong-ne)/상흔 (sangheun):方言で「夫」を表す
- 남편님 (nampyeon-nim):日本語と同じで権威や「主」を表す言葉
主に남편 (nampyeon)を使うのが無難でしょう。
中国語と同じく、남편님 (nampyeon-nim)は特に自分の夫を指すときには使わない方が良いでしょう。
ベトナム語
ベトナム語は表記はアルファベットを使用していますが、元の意味は漢字由来の物があります。
主従関係による失礼な言葉ではないですが、使い方には注意が必要です。
- Chồng /Ông xã/Phu:一般的に「夫」として使われる
- Chủ nhân:「主人」の意味で、日本語と同じで権威や「主」を表す言葉
ベトナム語ではChồng /Ông xã/Phuあたりを使うのがよいでしょう。
Chủ nhân以外にも主従関係を含めた言葉があるので、語源がわからない言葉は使用を控えた方が無難です。
アジア圏では上下関係の意味を含んだ「主人」という言葉が存在しています。
しかし翻訳する時などにはその語源や現地の人の使用頻度から、使ってもいいかの判断が必要です。
西洋よりアジアの方が「主人」という言葉に注意が必要ですが、歴史的な背景から使うべきでない言葉や表現があると思います。
「主人」の多様性を理解して使う
「主人」という言葉は日本語での使い方と外国語での使い方に違いがあります。
- 日本語…夫を指す言葉
- 海外…店の店主や雇い主を指す
夫のことを雇い主と表現することで、差別的なとらえられ方をすることもあります。
翻訳する時は主従関係や差別的な表現でないかの確認が必要です。
他の言語での「主人」の調べ方と注意点
「主人」は日本語と外国語では使われ方に違いがあります。
価値観の違いにより使い方が変わるのが特徴です。
日本語の方を確定してから辞書などで調べましょう。
「夫」「主人」「旦那」「亭主」など日本人が同じ意味合いで使っている言葉も外国語によっては意味が違って翻訳されてしまうことがあります。
「夫」を意味する言葉で検索するのであれば「夫」で検索しましょう。
この時に「主人」「旦那」などで検索すると違う単語に翻訳される可能性があります。
この方法が違う意味合いの言葉に変換されずにすむ方法です。
まとめ日本語にも外国語にも1つの言葉に対していくつかの表現があります。
中には主従関係を含めた言葉もあり、受け取り方もその国々の文化や習慣によってさまざまです。
使い方を誤ったために雰囲気が悪くなることもあるかもしれません。
日本語の漢字の使い方の概念は西洋人にはないでしょうし、同じ漢字圏内の国でも意味が違うことがあります。
まとめ
日本と海外では主人の使い方が違います。
- 日本語…夫を指す言葉
- 海外…店の店主や雇い主を指す
「あなたの夫」と言いたいところを「あなたの主人」で翻訳することで、相手の外国人には「あなたの店主」と伝わってしまうかも知れません。
同時に相手の奥さんのことを「雇われている人」と言っているように感じられるかもしれないです。
日本語からの翻訳をする時は、まず適切な日本語を選んでから翻訳しましょう。
そうすることで、不適切な表現を避けることができます。
言葉はコミュニケーションを取る重要なツールですので、使い方にも十分な配慮が必要です。
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